昨年の秋に、姉から勧められて、『獣の奏者』を手に取ったのが、 上橋菜穂子さんの作品との出会いでした。
その最初の一ページから、瞬く間にその世界に引きずり込まれエリンとともに旅を続けている自分がいました。
それから、遡るかたちで上橋さんの作品を読み始め、『狐笛のかなた』と出会いました。
戦国時代の日本のような世界。 呪術や魂の戦いのある世界。 そして、人と霊狐とが強い絆を結べる世界。
本当に、本当に美しい物語でした。 語りたいけど、でも言葉が見つからない。
それは、大袈裟かもしれませんが、魂に響く物語でした。
心の中から溢れる優しさや愛しさ。 悲しみや憎しみ。
それが本当に見事に織り込まれ綴られた物語です。
その頃には、もうすっかり上橋さんの世界の虜になっていました。
読み終わったあと、涙が溢れてきて、小夜と野火を想うと、涙が止まりませんでした。
そうやって、もう一度一ページ目から紐解くと、その言葉一つ一つに泣けてきてしまうのです。
そんな世界を一人でも多くの人に知って欲しい。感じて欲しい。
何より、この世界をカタチとして表現したい、そう思いました。
このとき、子供と親とが一緒に同じ時間を共有し、同じ世界に想いを馳せることのできる作品作りをしたい、
という私の夢に、この作品はふさわしいのではないか。そう思い、この舞台化を決意しました。
小夜と野火、そしてこの世界に生きる、人とあやかしをたくさんの人に見て、感じていただけたらと思います。
2008年1月某日 風ノ環〜fu-ring〜 間宮 知子 |